天の川銀河からの贈り物パートⅠ
あらすじ・登場人物紹介はコチラ
天の川銀河からの贈り物~Ⅰ
夜空は濃い藍色を描いて めずらしく星の良く見える夜だった。
東京某所の、小高い丘にあるマンションの一室。
リビングの奥にある、幅のひろいベランダに、ガーデニング用の椅子をおいて、ひとしきり夜空を眺めるのが、恵留(エル)の日課だった。
リビングでは夫の信弘が、野球に夢中になりながらビールを飲んでいる。
そんな様子を見ていると、用事を言いつけられない時間だと、ほっとできる。
それを確認して、また星空を見上げた。
そしていつもそうしながら、同じことを思い出す。
あれは、13歳になったばかりの春先の頃。
実家のベランダで、今と同じように星空を見上げていると、向こうの方から何か大きな光がやってきた。
驚きに息をすまして眺めていると、その光は実家の庭の、向こう側にある林の上で止まったのだ。
怖い半面、あまりにもその光がきれいで近づいてきたものだから、
思わず玄関を出て、林の方へと走って行った。
光はそこに止まっていたが、その光源は、遠い空の上にあった。
足を止めて ただ眺めているしかなかったエルだが、
突然、自分を射してきた光がまぶしすぎて、眼をおおった。
眼をとても開けてられないくらいの、強い光~そんなショックが襲ってきて、
それからの記憶がない。
いつのまにか家に帰って、ベッドに横たわっていたのだ、着替えることもなく。
そんな記憶を、いまだに覚えているのは、ショックだけからではなく、
何故か、ものすごいなつかしさがこみあげてくるからである。
懐かしい・・・、ちょうど何十年もそこにいたような、暖かさと受け入れられる感覚が、
今でも忘れられないでいるのだ。
あの不思議な感覚は、安らぎと・・・そして何故か涙が出るほど、
切なくて胸が痛むような気がする。
昔幼いころの、初恋に似た感情に驚きながらも、その感覚に酔ってしまう。
「何かに魔法にかけられた?・・・いいえ洗脳されたかも。」
同学年の親しい友達に話したことはあるが、ねぼけてたんじゃない?と、
相手にされなかった。
今でこそUFOとかアブダクション(誘拐)などの話題が、TVでも一般的に放送されているが、
あの当時は、そんなハッキリとしない経験は、ほとんど信じてもらえなかった。
それに体も無事で、さらわれた証しのようなものはなにもない。
チップを埋められたとか、経験を告白している人達もいるが、自分の身体にはそのような痕跡はない。
ただ あの強烈な光を全身にあびた、かすかな記憶が残っている。
それが唯一、夢でない証拠だ。
あれは一瞬か、はたまた何十分も経っていたのかさえもわからないが、
今ではよく無事で帰ってこれた、とも思うのである。
「今日の星空も、あの時に似ているわ」
そんな確認をしてから、寝室に入るのが日課になっていた。
:..。o○☆「天の川銀河からの贈り物Ⅰ~1P」:..。o○☆゚・
「天の川銀河からの贈り物Ⅰ~2P」からはこちら
2012年作製 「天の川銀河からの贈り物」
~宇宙規模での恋と冒険のお話し「青い炎」~
その壮大な物語の中の、現代における魂の出会いと物語
「天の川銀河からの贈り物」 の続きをどうぞ♪